アメリカ女子サッカーは長年、世界の頂点に君臨してきた。ワールドカップでは過去８回中４回、オリンピックでは７回中４回の優勝を果たし、他国を圧倒してきた。しかし、今大会ではまさかの16強敗退という屈辱を味わった。スウェーデンとの死闘はPK戦までもつれ込んだが、最後は敵地で涙を飲んだ。これは単なる偶然なのか、それともアメリカ女子サッカーの衰退の兆しと見るべきなのか。
アメリカ女子代表にとって、今大会は悪夢のようなものだった。グループステージではポルトガルに引き分け、スウェーデンに完敗し、２勝できなかったのは初めてだった。決勝トーナメントではスウェーデンと再び対戦したが、90分間も延長戦もゴールを奪えず、PK戦に持ち込まれた。ここでも両者譲らずサドンデスに突入すると、７人目でようやく決着がついた。アメリカは４－５で敗れ去り、ワールドカップ３連覇の野望が潰えた。
アメリカ女子代表の敗因は何だったのだろうか。一つは攻撃力の低下だ。今大会でアメリカは４試合でわずか４得点しか挙げられなかった。ポルトガルとスウェーデンからは１ゴールも奪えなかった。モーガンやラピノーといったスター選手が不発に終わり、チーム全体が決定力を欠いた。もう一つは年齢バランスの悪さだ。ラピノーは引退するが、モーガンやダン、アーツ、ナイアーといった30代でピークを過ぎたベテランが多くを占めている。一方でロッドマンやスミス、ギルマら若手の成長は頼もしいが、ベテランと若手をつなぐ中間層にタレントがまるで育っていない。この穴はそう容易くは埋まらないだろう。
アメリカ女子代表が直面しているのは、世界のレベルアップだ。欧州やアジアのチームは技術や戦術を向上させており、アメリカに対抗できるようになってきている。特に欧州では10代前半からの選手育成に本腰を入れており、リヨンやバルセロナなどの強豪クラブが若手選手を輩出している。一方でアメリカではNCAA（全米大学体育協会）が育成システムの中心だが、もはや十分ではない。NSWL（米女子リーグ）のクラブにはユース専用のアカデミーさえない。この差は今後さらに拡大する可能性がある。
アメリカ女子代表は今後どうすべきなのか。まずは監督の交代だ。現監督のアンドノフスキは今年いっぱいの契約を延長できないだろう。新しい監督の下で新たなスタートを切るべきだ。次には選手の入れ替えだ。ベテラン選手には感謝するが、来年のパリ五輪まで引っ張るのは無理がある。若手選手にもっとチャンスを与え、新しいチームを作り上げるべきだ。最後には育成システムの改革だ。NCAAに頼らず、NSWLのクラブにユースアカデミーを設立し、国際的な競争力を持つタレントを一刻も早く育てるべきだ。
アメリカ女子サッカーはまだ終わっていない。彼女たちはこれまで数々の困難を乗り越えてきた。今回の敗北は新たな挑戦の始まりに過ぎない。軌道修正を間違わなければ、またすぐにトップに返り咲けるだろう。アメリカ女子サッカーの復活を期待しよう。
