「落札されず、すべての応募者が辞退」 国立劇場の建て替えはどうなる？（デイリー新潮） - Yahoo!ニュース
日本の伝統芸能のファンにとって、今年の10月末は悲しい日となるでしょう。なぜなら、国立劇場と国立演芸場が閉場するからです。これらの劇場は、半世紀以上にわたって歌舞伎や文楽、能や狂言などの上演の場として、日本文化の発展に貢献してきました。しかし、老朽化が進んだため、建て替えが必要となりました。
国立劇場は昭和41年に開場し、歌舞伎を中心に伝統芸能の上演を目的として設置されました。三島由紀夫の新作歌舞伎や坂東玉三郎の初舞台など、歴史的な公演が数多く行われました。また、中高校生を対象とした歌舞伎鑑賞教室など、ファン層の開拓にも取り組みました。国立演芸場は昭和54年に開場し、文楽や落語、漫才などの上演を行いました。特に文楽は、国立演芸場が唯一の常設の舞台となりました。
閉場に際しては、昨年9月から「初代国立劇場さよなら特別公演」が続いており、現在は歌舞伎「妹背山婦女庭訓」や文楽「菅原伝授手習鑑」などが上演されています。しかし、残念なことに、客の入りは芳しくなく、熱気にも欠けるという声が聞かれます。13年前に銀座の歌舞伎座が一時閉館した時の盛り上がりとは対照的です。
さて、閉場後の両劇場はどうなるのでしょうか。運営する日本芸術文化振興会は、PFI（民間資金を用いた社会資本整備）を活用した新劇場の整備計画を発表しました。しかし、その計画はなかなか実現に向かわず、入札に応じる業者が見つからないという状況です。人件費や建設資材の高騰が要因とされていますが、新劇場の完成時期はいまだに不透明です。
国立劇場と国立演芸場は、日本の伝統芸能の象徴として、多くの人々に愛されてきました。その歴史に幕を下ろすことになるのは、とても残念です。しかし、伝統芸能は、新しい時代に合わせて進化してきたものです。新劇場ができるまでの間、他の劇場やメディアで、伝統芸能の魅力を広めていくことができれば、それもまた一つの文化の発展と言えるのではないでしょうか。国立劇場と国立演芸場に感謝しつつ、伝統芸能の未来に期待したいと思います。
