こんにちは。今回は、高所得者でも老後破産の危機に陥る可能性があるという衝撃的な事例をご紹介します。
年収1,000万円超の高所得者は、日本人のわずか4.9%しかいません(国税庁:令和3年分 民間給与実態統計調査 )。しかし、この上位約5%に該当する人であっても、老後破産のリスクは十分あるということを知っていますか?
私の相談室に来られたAさん(59歳)は、その一人でした。Aさんは部長職を退任予定で、退職金3,500万円が支給されます。その後65歳までの再雇用を選択した場合、年収は現在の1,050万円から600万円まで減る予定です。
Aさんはこれまで仕事一筋でがむしゃらに働いてきました。子育ても家計管理も専業主婦の妻Bさん(56歳)に任せっきりでした。自分名義のクレジットカード(家族カード)を渡して、家計の支出が月いくらなのかも把握していませんでした。
60歳の定年が近づいたある日、家に帰ると思い詰めた顔の妻が。Aさんが「どうした?」恐る恐る聞くと、涙をながして「ごめんなさい……!」と謝るBさん。Aさんがなだめてワケを聞いたところ、ストレスからくる爆買いが止められず、ついに預金残高が100万円を切ってしまったとのことでした。
Aさんは驚愕しました。それもそのはず。Aさんは自分たち夫婦の貯金額を5,000万円以上だと思っていたからです。しかし実際は100万円以下。これでは老後資金に大きな穴が開いてしまいます。
Aさんが「なんでこんなことになるまで相談してくれなかったんだ!」と問い詰めたところ、Bさんから次のような理由を聞きました。
- Aさんが毎日夜遅くまで働いており、日常的な会話すらほとんどできなかったこと
- 専業主婦である自分(Bさん)には社会とのつながりがなく、ネットショッピングと買ったものを自慢するためのSNSが大きな生きがいになっていたこと
- ブランドの服やバッグが増えていても、Aさんがまったく気づいていなかったこと
Aさんはこれらの理由を聞いて、一方的に怒ることはできませんでした。自分も仕事に夢中になりすぎて、妻の心の声に耳を傾けていなかったことを反省しました。
Aさんは私に相談してきましたが、残念ながら、簡単な解決策はありませんでした。住宅ローンは退職金で返済できますが、それでも老後資金が不足する可能性が高いからです。
老後資金を増やすためには、家計管理を見直し、支出を抑え、収入を増やすことが必要です。具体的には以下のような対策をおすすめしました。
- 家計簿をつけて、収入と支出のバランスを把握する
- 無駄な出費や贅沢を控える
- 妻もパートやボランティアなどで社会とのつながりを持ち、収入源を増やす
- 老後資金の目標額を設定し、定期的に貯蓄額や運用状況を確認する
- 老後資金の運用については、リスクとリターンのバランスを考える
Aさんは私のアドバイスに感謝しました。しかし、これから実行することは簡単ではありません。妻との信頼関係を回復し、家計管理に協力しあうことが必要です。また、生活水準を下げることも覚悟しなければなりません。
Aさんの事例は極端かもしれませんが、高所得者でも老後破産のリスクはゼロではありません。特に、家計管理を放棄している人や、老後資金の目標額や運用方法について考えていない人は注意が必要です。
老後破産を防ぐためには、早めにライフプランニングを立てることが大切です。私たちはFPとして、お客様のライフプランニングをサポートします。お気軽にご相談ください。