なぜ「AFURI」は炎上したのか 商標権めぐる主張で重ねた「悪手」（ITmedia ビジネスオンライン） - Yahoo!ニュース
こんにちは。今回は、ラーメン店「AFURI」と酒蔵「吉川醸造」の商標権争いについて考えてみたいと思います。
この問題は、吉川醸造がニュースリリースを発表したことで一般に知られるようになりました。ニュースリリースでは、吉川醸造が「あふり」という呼称を使用している商品に対して、AFURIが商標権侵害を主張し、商品の全数廃棄を求めているという内容が書かれています。また、吉川醸造は、「あふり」という呼称は丹沢大山（阿夫利山）周辺の地域、歴史、文化に由来するものであり、同じ丹沢水系をもとに価値創造している業者同士で共有できないかと提案していたとも述べています。
このニュースリリースを読んだ多くの人は、AFURIに対して批判的な感情を抱きました。なぜなら、ニュースリリースは、法的な事実関係よりも、読み手の感情を揺さぶることに重点を置いて書かれていたからです。地元の人たちにとって、「阿夫利」「雨降山」という呼称は正式な地名と同じくらい一般的であり、特定の企業や人物に帰属するものではないという感覚が強くあります。そのため、「ラーメンのAFURIは、地域に根差した歴史ある共有財産を使ってブランドを展開しているのに、地元の酒蔵をいじめるとはどういうことだ」という印象を持ちました。
しかし、実際にブランドをもとにビジネスを展開している経営者や知財専門家の観点では、この問題はそう単純ではありません。AFURIは、「AFURI」という商標そのものを正当に登録し、保有しています。商標権は、自分の商品やサービスを他人と区別するための重要な知的財産です。商標権を侵害されると、自分のブランドイメージや信用が毀損される可能性があります。そのため、商標権者は、自分の商標が他人に不正に使用されている場合には、それを阻止する義務があります。そうしなければ、商標登録が無効化される恐れもあります。
つまり、AFURIは、「あふり」という呼称が自分の商標「AFURI」と混同されるおそれがあると判断し、法的な手続きに基づいて対処しただけなのです。これはビジネス上当然のことであり、「イヤらしい」や「強引すぎる」という批判は的外れだと言えます。
しかし、「正しい手順」を踏んでいることと、「正しい印象」を与えていることは別の話です。AFURIは、「あふり」という呼称が地域に根ざした歴史や文化を反映していることを十分に理解し、尊重しているという姿勢を示す必要があります。また、吉川醸造との間で何らかの協議や交渉が行われていることを公表し、両者の利害を調整する努力をしていることをアピールする必要があります。そうすれば、AFURIは、「地元の酒蔵をいじめる悪者」というレッテルを貼られることを避けられるかもしれません。
この問題は、商標権に関する法的な判断だけでなく、ブランドに関する感情的な判断も重要であることを示しています。商標権は、自分の商品やサービスを他人と区別するだけでなく、自分の商品やサービスに対する価値観や信頼感を伝えるものでもあります。そのため、商標権を守ることは大切ですが、商標権を守りすぎて、自分のブランドイメージや信用を傷つけてしまうことは避けなければなりません。
商標権は、ビジネスの成功に欠かせない知的財産です。しかし、商標権を活用するには、法的な知識だけでなく、感情的な知識も必要です。私は、知財コンサルタントとして、商標権の登録や管理だけでなく、商標権のコミュニケーションやブランディングにも力を入れています。もし、商標権に関するお悩みがあれば、ぜひご相談ください。
